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資料詳細

項目 内容
資料番号 CH00005678
形状 自然史、写真・静止画像(データ)
資料名 春日井キャンパスの植物(スイフヨウ)
作者 学校法人 中部大学
設置場所 中部大学(2号館中庭)(当時)
コレクション名
計測値 W(mm)
計測値 D(mm)
計測値 H(mm)
分類 自然史
解説 アオイ科フヨウ属Hibiscus mutabilis cv(cultivated variety)versicolor
ハイビスカスと同属、フヨウの種小名mutabilisは「変化しやすい」の意。秋口に咲く。朝咲いて夕刻にはしぼむ。スイは酔であり、スイフヨウはフヨウの栽培は品種で、花を八重としている事典が多い。この品種のフヨウでは、午前中は白かった花が午後になるにつれて淡紅色に変わり、あたかも白面の人が酒の酔いの回ったように見えるからという。この変化は気温が高いと早く進むようである。中部大学2号館中庭奥の樹の花色は朝と夕で全く違い、その変化からスイフヨウと思われる。花弁は一重で、スイフヨウには八重でないものもあるようである。
フヨウには室町期には栽培と鑑賞の記録があるらしい。かつては茎の皮からとれる繊維を漁網や製紙などに利用したという。韓国の国花であるムクゲは同じ属で、少し小ぶりの花はフヨウに似ている。花弁の先端は波状で、葉の形は似ていない。
フヨウの花は女性の美しさの例えとなる。「芙容の雪の精をとり、吉野の花の華を奪い」という旧制高校寮歌の一節があるが、芙容と雪は季節が合わない。私はかつて歌詞を「芙蓉の花の精をとり、吉野の華の香を奪い」と思い込んでいた。辻褄(つじつま)はなんとかあっているが、芙蓉が富士山のこととは知らなかったのである。
中部大学のスイフヨウは今年も咲いていたが、根元の腐食が進んでいたらしく、彼岸直前に樹が倒れ、次の週には切り株だけになっていた。残った株から再生するようならよろしくと管財部の方にお願いしたが、スイフヨウは庭の空間から幻のように消えてしまい、惜しいことではある。

参考)
・「朝日百科植物の世界」第7巻、朝日新聞社1997
・「花と樹の大事典」木村陽二郎監修、柏書房1996
・ウィキペディア「フヨウ」
・花ことば:「繊細な美」、「しとやかな恋人」

出典:「春日井キャンパスの植物」(『ANTENNA』 No.162、2024年1月、12頁。太田明徳 記および撮影 学校法人中部大学 監事(当時))